今 週 の レ シ ピ

・アドバンスクラス(8月第1週)のメニューより

●小鯵(こあじ)の南蛮漬け   124kcal. 塩分1.9g

小鯵(こあじ)の南蛮漬け [材料]  -6人分-

・小鯵(こあじ)12尾
  ◎A
    醤油(しょうゆ)大さじ2
    酒大さじ2
・片栗粉大さじ3
・揚げ油適宜
  ◎漬け汁
    醤油大さじ3
    みりん大さじ2
    酢大さじ2
    唐辛子1〜2本

[作り方]

  1. 小鯵はエラとハラワタをとり、Aに15分位漬け込む。
  2. 唐辛子の種をとり、輪切りにする。
  3. 漬け汁の調味料を合わせ、唐辛子の輪切りを入れる。
  4. 1の小鯵に片栗粉をつけ、170℃位の油でカラッと揚げ、3の漬け汁にすぐに漬け込む。
  5. 小鯵をときどき返して、均一に味をつける。
ポイントはここ
  • 小鯵は頭から尾までの長さが、12〜15cm位のものを用意してください。15cm以上のものは、しっかり揚げても、骨まで全部食べるのはちょっと無理でしょう。店ではこの大きさで、10〜15尾の単位で売っていると思います。「12尾」にこだわらず、10〜15尾で調理してください。
  • エラは4枚あります。包丁の先にかけて、引き出します。いっしょにハラワタも取り出してください。うまく引き出せなかったときは、鯵の裏身(頭を左に、腹を手前に見たときの裏側)の腹から1cm内側を、頭に近いほうから長さ3cm位切って、ハラワタを出してください。そのあと、一度冷水でサッと洗い、水気をよく切ります。

    エラを引き出す ハラワタを取り出す

    小鯵の下味付け

  • Aも漬け汁も、鯵をならべてつけられるよう、平たい器(バット)に合わせてください。
  • 鯵に、片栗粉は丁寧にうっすらとつけてください。片栗粉がつきすぎたら、たたいてよく落としてください。(「厚化粧ははげやすい」の通り、厚くつけて油で揚げると、漬け込んだあと、その片栗粉だけがとれやすいのです)
  • 油で少し香ばしいくらいに揚げて、すぐ漬け汁に入れてください。2、3回鯵を返して、味と色を均一にしてください。

    片栗粉はうっすらと 油からすぐ漬け汁に

ちょっと一言
  • 小鯵のほかに、長さ5〜6cmの豆鯵(まめあじ)でも調理してみてください。下味付けや揚げる時間を、少し短くしてください。どちらも、頭から丸ごと骨まで食べられます。
≪組み合わせメニュー≫
    ◎豆腐とわかめの味噌汁
    ◎ゆでナスの辛子醤油
    ◎冬瓜(とうがん)の含め煮 鶏くずあん
【野口料理学園】
塩 ひ と つ ま み

■ゆとり

娘さんのお産の手伝いから、2ヶ月ぶりに帰宅したAさんです。留守の間ひとりだったご主人は、さすがに外食ばかりで飽きたらしく、ときどきは自分で料理した形跡がのこっていました。台所に見慣れないものがあります。

テレビショッピングで買ったという「野菜切りセット」です。数種類の替え刃が付いていて、せん切りから薄切り、みじん切り、キャベツの丸ごとせん切り、刺身のツマも切れれば、大根おろしもできてしまう便利なもの。そう説明書を読み上げるように、一所懸命ご主人は説明するのだそうです。

無駄買いではないことを、必死に弁解する様子はとてもカワイク(?!)みえたとか。それはそれとして、2ヶ月もの間不自由にさせた手前、口には出しませんでしたが、「そんなの包丁1本でできるのに」と言ってやりたかったのを、Aさんはグッとこらえていたそうです。

大根おろしは無理として、1本の包丁があればいろいろなことができてしまいます。切るのはもちろん、たとえばウズラの卵を割るのに使ったり、エビや魚をつぶしてすり身を作ることができます。ゴボウの皮を包丁の背でこそげたり、笹がきに切ったりもできます。

お稽古で大根、ニンジン、ジャガイモなどの皮をむくとき、「先生、皮むきありませんか?」とよく生徒さんから聞かれます。たしかに皮むき器のほうが簡単に、しかも薄く早くむけるでしょう。ジャガイモなど、くぼんだところの皮も上手にむいてしまいます。でも、私は包丁でやらせます。皮むき器がないときはどうします? それを考えると、包丁でできることを覚えてほしいのです。

りんごの皮をむくのは果物用ナイフ、栗の皮をむくなら栗むき器と、用途に応じて道具を常備しておくのもいいのですが、それぞれの「スぺシャリスト」にわざわざ頼らなくても、慣れてしまえば包丁1本で臨機応変に、それも遜色なく対応できてしまうのです。「裏技」ではありません。ちゃんとした「表技」です。

ひとりで何役もこなす包丁があるかと思えば、一方で逆のことがみられます。
「これ1本あれば、いろいろに使えます」式のタレがお目見えしました。ひとつの製品で、吸い物にも使えれば、煮物、そばつゆ、おでん、鍋物、うどんの煮込み用、炊き込みご飯の味付けにもどうぞといった具合に、じつに用途が広いのです。

どう使い分けるか? というと、「濃淡」。つまり、そのタレは濃縮になっていて、使いみちによって濃くしたり薄くしたりするのです。調理にテマヒマいらず素早くできて、合理的といえば合理的です。で、お味のほうは?

好みというのは、人それぞれですが、どうにも私の口には馴染みません。味が単調なのです。うまみ、深み、個性といったものが感じられません。カツオ出汁(だし)かコンブ出汁のひと味で、いくつもの味を兼ねるところに無理があるようです。カツオ節やコンブが主味にしても、他の食材からの出汁をも取り込んだモザイク型の化学臭のない、繊細で独自性のあるトータルな味を求めるのは無理なのかもしれません。

今の時代、「ゆとり」を錦の御旗に動いています。ゆとりの教育、ゆとりの生活、ゆとりの人生…、家庭で言えば、家事の煩わしさから少しでも解放されるように、さまざまな家電が発明され工夫されてきました。台所は、革命といってよいほどの劇的な改善を遂げました。結果、「ゆとり」が出てきたのは事実です。

でもその勢いが、少しオカシナ方向に行っている気がしないでもない、と感じるのは私ひとりでしょうか。ほんの1例が包丁であり、タレの話です。悲しいのは、「食」が、必要以上に「改善されるべき対象」になっていることです。調理というプロセスのなかでも、どんどん切り詰められ省略されていくうちに、落としてはならない大事なプロセスまで削除されてしまっているのではないか。そういう心配です。

「食」における「ゆとり」とは、時間の短縮と手間の簡略をすすめるだけではないはずです。おいしさ、楽しさを抜いてしまったら、なんのための「食」でしょうか。それは、「食べる」だけでなく、「調理する」プロセスもおなじです。行為自体のなかに楽しさがあり、「ゆとり」とともに無上の喜びを感じとっているのです。


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