先週はゴールデンウイークのためお休みでしたが、問い合わせの電話が1本かかってきました。

―すいません、カロリーのこと、聞いていいですか？
中高年らしき男性の声です。
―この3ヶ月、どんどん体重が増えて困っているんです。８５キロにもなっちゃって。肉とか脂っこい物が大好きで、天ぷらだフライだ、そんな物がないとダメなんです。

―単身赴任ですか？
外食が多いのかと思ったのですが、家族といっしょに住んでいるといいます。つぎに質問しました。
―３食はどうしていますか？
朝はコーヒー１杯。昼は弁当持参、といってもおにぎりが２個。夜もちゃんと家でとるようです。

― 一日、どのくらいのカロリーでいいんですか？
―だいたい２０００カロリーですが、職業によってもちがってくるでしょうね。
肉の解体作業をしていて、朝の５時出勤と早いようです。そのぶん帰宅も早く、帰るなり冷蔵庫へ直行して立ったまま、まずビールを１本空ける。そのあと夕食をとりながら、こんどは２５度のアルコール分の焼酎をコップ２杯飲むのを日課としているそうです。

お酒の量はそれほど多いとは思いません。ただし、カロリー数は高い。ビール１本（７２０ｍｌ）は２５０カロリー、２５度の焼酎２杯（２合）が４００ｇとして５００カロリーとすれば、これだけで合計７５０カロリー。１回分の食事です。これにトンカツなど食べたら、軽く一日分はいってしまいます。

―マヨネーズもお好きでしょ？
―へぇ、よくわかったね。大好きです。ドレッシングなんてものは、物足りなくてね。
当たりでした。根っから肉や脂っぽい物がお好きなようで、生活習慣病にはなっていませんが、危機感はかなりもっているようです。

―野菜は…
というが早いか、
―これが大の苦手でして。食べることは食べるんだが、さっきもいったように、マヨネーズのほうが、はるかに多くてね。なんでもお見通しスね。
電話口の向こうで首をすくめ、頭でもかいているのでしょう。正直な人柄が伝わってきます。

―どういう物を食べたらいいですかね？
いよいよ来ました。アドバイスです。こうした場合、「強行策」は禁物です。一時的に効果はあっても、かならずといいほどリバウンドがみられ、事態はさらに悪化するのがオチ。お酒を断てば効果はテキメンです。ですが、そのストレスがどこかへいきます。たとえば、ヤケ食いをするとかして。なので、劇的効果はもとめず、できる範囲で長く続けられる無理のない方法がいいようです。

でも、お酒の量を減らすのはゼッタイ行使です。そこで、ビールの大ビンを中ビンにするとか、２５度の焼酎を２０度に落としたうえで、コップに入れる量を７分留めにするとか、２杯の合間に水を１杯飲むなどの工夫をします。ほかに天ぷらやフライを揚げる油を熱量の低いものを使うとか、サラダでもマヨネーズを減らすのが嫌なら、そのぶん野菜を増やすとか、できそうなものは試してみましょう。

危機意識をもっているということは、なにが禁忌事項で、どうするのが必要手段か、当人はすべて承知しているフシが見られます。自分ではなかなか実行に踏ん切りがつかず、かといって奥さんからいわれてやるのはシャクだ、ぐらいに思っているのでしょう。料理学校の先生に指摘してもらえば、奥さんへの説得力があり、「亭主としての面目」も保てる。

そのあたりの「空気」を察して、私は本人がその気になって動こうとしているまさにその背中を、ほんのちょっぴり、指１本でつついてあげるつもりでお答えしました。
こちらがニラんだ通り、その男性は（ちゃんと名前を名乗りました）、つぎのようなことばを残して電話を切りました。

―わかりました。半年間、やってみます。半年後、また電話させてください。お願いします！