塩 ひ と つ ま み

■にらめっこ

恒例の町内の夏祭り(8月23、24日)が終わりました。20坪ほどの土地に建つ小さな神社の小さなお祭りです。今年は仕事の都合でお手伝いができませんでした。せめてもと、福引や輪投げの景品などの買出しに一役買わせていただきました。お弁当もそのひとつです。お祭りの準備と、後片付けに手伝いにくる人たちに出す“お昼”です。これまでは仕出屋さんに頼んだり、コンビニやスーパーで買っていましたが、今年は、近くにある全国チェーンのお弁当屋さんで調達することになりました。

事前に電話で確認をとりました。お祭りに使いたいこと(500〜600円で30食を2回分)、車で5分もあればこられる近い場所などを告げると、「配達させていただきます」ということで、メニューを決めるために、私をふくめて3人がお店に足をはこびました。店頭の写真をみてメニューを選びます(じつはこういうお店に入るのは初めてです)。エビフライ、煮物、漬物などの入ったいわゆる幕の内弁当をお願いしました。

注文がすんで、配達してもらう場所の住所と略図、それにケータイの番号を書いたメモを渡しました。そこからです、雲行きがおかしくなったのは。
「エー、これよくわかんない!」
第一声がこれです。まったく予期しないこたえでした。略図の書き方がまずかったのでしょう。口頭でフォローしました。
「○○ドラッグストア、知ってますか」
300mほど先のまるまるワンブロックもある大きな店舗です。
意外なことに、
「わからん!」
利用したことがないのでしょうか。あるいは存在は知っていても店名を憶えていないのか。
「じゃ、△△洋菓子さんは?」
これは知っていました。でも、ドラッグストアの筋向いです。それはいいとして、
「そこを左折、つぎの信号を右折します。その先は行き止まりになっているので左折して300、400mいくと右側にあります。お祭りの準備をしているのですぐにわかると思いますよ」
ここまで言っても「わからん、わからん」を連発、怒気をはらんでまるで喧嘩腰です。説明するほど険悪になっていきます。どこがどうわからないのか、こちらもわかりません。ただもう目をパチクリです。

この辺は、区画が碁盤の目のようになっていて比較的わかりやすいところです。それだけに場所を説明しようとすると、“紆余曲折”は避けられません。この店員さんだって住まいは近所でないにしても、通勤などで土地カンはあるでしょうに。それに、私たちは初めて注文しますが、一円は配達区域で何遍もまわっているでしょうに。また配達作業は、あなたがたの重要なセールスポイントでしょうに。

なにゆえこんなにもご機嫌ななめなのか。たまたま虫の居所が悪かったか、それともよほどの“方向音痴”か(接客態度とは無関係でしょう)。いくらなんでもこんな乱暴な言い方はありません。お客さんが入れ替わり立ち替わり入ってきて忙しいのはわかります。それならそれで、「あとから調べて、お電話します」ぐらいのことが言えないのでしょうか。

奥の調理場から、別の店員さんがなにか聞いています。それにたいする返答がまたスゴイ。
「うるさい、いま忙しいからあとにして!」
ヒステリックな怒鳴り声です。とりつく島もありません。われわれに向かって言っているようにも聞こえます。口ぶりから、40代後半のこの女性は店長のようですが、リーダーとしたら失格です。私が上司だったら、即刻辞めてもらうでしょう。商売っ気を無視した変わり者のオーナーならあるいは許されるかもしれません。度を越したサービスも鼻につきますが、このような客を客とも思わない無神経さにも腹がたちます。
『もういいです、ほかへ頼みますから』
こんなことばが口から出掛かりました。私だけでなく、あとの2人もそう思ったそうです。

当日は、それでもちゃんと配達してくれました。横柄な店長とは似ても似つかぬ腰の低い中年の男性でした。あまりのギャップに、一緒に仕事をしている優しそうな店員さんが気の毒に思えてなりませんでした。

こんな調子ですから、肝心のお弁当は期待しませんでした。ところが、これがケッコウおいしいんです。初めて食べましたが、この値段でこの味はなかなかです。
『これじゃ、自分で作らないで買ってしまう』
正直、そう思いました。店長の尊大さにもかかわらず、お客さんが引きも切らないわけがわかりました。それだけに店長のとげとげしい態度が惜しまれてなりません。

ところで、今年のお祭りは雨でさんざんでした。猫の額ほどの境内にテントを張って(ひと張りで目いっぱい)、みなさん、その中に縮こまっていたようです。なんとも意気のあがらない祭典でした。おまけに翌日も雨。さらにその翌日もと、雨に祟られっぱなしでテントが撤収できません。1週間たっていまだにテント、幟(のぼり)、ともに取り込めない状態です。このところの「ゲリラ豪雨」の影響で、天気予報があてになりません。お天気とお弁当にふりまわされるお祭りとなりました。ま、こんな年があってもいいかと、うらめしく空とにらめっこしています。

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【野口料理学園】

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