塩 ひ と つ ま み

この2月まで毎週土曜日に発行されていたフリーペーパー「かわせみ」にJICAの日系シニアボランティアとしての活動を通して感じた様々のことを、月に一度、12回書かせていただきました。「かわせみ」を発行していた「タウン企画」のご好意で、HP「家庭料理が一番!」の「塩ひとつまみ」に載せるご許可をいただきました。つたない文章ですが、良かったら、私のモジ・ダス・クルーゼスでの「食」を中心にした活動と同時に、ブラジルでの生活、日系社会とのかかわりについてお読みいただけたら、幸いです。

モジから「ボンジーア」

●2 旬はない?筍と栗が一緒に  2018年2月10日掲載

地球の反対側に位置するブラジルと日本。時差は12時間、日本が半日早く、つまり日本が土曜日の朝8時は、ブラジルでは金曜日の夜8時です(10月半ばから2月半ばまで「夏時間」(※参照)のため時差が11時間になります)。また南半球のブラジルと北半球の日本では季節が「逆」と言いたいのですが、日本のように四季がはっきりしていません。何しろ日本の23倍の面積の国。北方は熱帯ですから一年中夏、南方は冬になると氷も張るし、時には雪も降ります。

「ブラジルは暑いんでしょう?」とよく聞かれます。どうも、アマゾンを想像しているようです。ここモジは標高780mの高原地帯。さらに周りをぐるっと山に囲まれていて、もし、窓から富士山が見えたら、甲府にいるのと変わらないような景色です。気候は温暖、しいて言うならば1月〜3月が夏、最高気温が30℃を超えることもありますが、甲府のようなあの蒸し暑さを感ずることはほぼありません。7月〜9月が冬、でも、最低気温が氷点下になることはまずありません。ただ、「一日に四季がある」と言われるほど、目まぐるしく天候が変わる日もあり、外出には「上着」と「傘」は必携です。「衣替えはなし」と言え、それはそれは自由で、寒かったらたくさん着て、暑ければ薄着になればいいという考えのようです。

【モジの周りの山】

逆ではありませんが、ブラジルは12月が年度末、学校でいえば、卒業式、終業式があって・・・2月から新年度が始まります。つまり、クリスマス、お正月は「夏休み」の最中です。
サンタクロースは暑くても、みんな北半球と同じ服を着ています。
いつも、日本で生徒に、正月料理は計画を立てて作りなさいと教えていますが、夏のモジでは31日一日で仕上げるしかありません。料理を考えると正月は「冬」に限る・・・

みごとな富有柿 では、豊富な野菜や果物の「旬」も反対? というより、「旬」はないと思われます。広いブラジルでは、気候の違いで次々、別の産地から同じ食材が届きます。ただし、日本の食材の中には出回る時期が決まっているものもあり、日系社会ではその話題で季節を感ずるようです。わずか1年半の滞在の私でさえ、その仲間に入れてもらっています。
例えば、9月にはモジの特産品ビワの出荷が始まり、10月にはラッキョウ、梅、赤シソ、11月からは筍が出回り始め、12月には栗、4月にはこちらも特産品の見事な富有柿、寒くなりだす6月頃からはレンコンなどなど。白菜、ほうれん草は一年中、出回ってはいますが、やはり寒い時期がうま味が増して、「鍋料理」に最高です。

驚いたのは、日本では春の「筍」と秋の「栗」が12月になると店頭に並んでいます。「筍ごはん」と「栗ごはん」、まず日本ではいっしょに料理教室で実習なんてできません。それが、ここモジでは可能なのです。

【筍と栗 畑でも店でもいっしょ】

このように「和食」の普及活動が思う存分できるのはまさにブラジル日系社会の110年という歴史のなせるわざ。先人たちの努力のたまものと感謝しつつ、豊富な食材をもっともっと生かせるように活動を広げていきたいと思ってます。

アッ、忘れてました、「車は右」と交通ルールも逆です。歩行者は?と何人もの日系の方にお聞きしましたが、異口同音、「安全な所を歩いて!」

※大統領が変わり、最近、「夏時間」が廃止されることになりました。(2019年4月)

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<これまでの塩ひとつまみ>
【野口料理学園】

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