塩 ひ と つ ま み

この2月まで毎週土曜日に発行されていたフリーペーパー「かわせみ」にJICAの日系シニアボランティアとしての活動を通して感じた様々のことを、月に一度、12回書かせていただきました。「かわせみ」を発行していた「タウン企画」のご好意で、HP「家庭料理が一番!」の「塩ひとつまみ」に載せるご許可をいただきました。つたない文章ですが、良かったら、私のモジ・ダス・クルーゼスでの「食」を中心にした活動と同時に、ブラジルでの生活、日系社会とのかかわりについてお読みいただけたら、幸いです。

モジから「ボンジーア」

●4 健康的な食事なのに肥満  2018年4月7日掲載

 初めてブラジルを訪れたのは34年前、その時の衝撃は一口飲んだコーヒーで、卒倒しそうになりました、大袈裟でなく・・・「あまーーい」、それは今も変わってませんが。
 日本ではほとんど砂糖を入れずに飲んでいますが、ブラジルにいる間はやはり甘いコーヒーが必要です。ちゃんと理由があるんです。洋風料理が主流のブラジルの調味料は、塩、コショウ、酢、油。そうです、砂糖は使われません。食事の後に、甘いものが欲しくなるんです。日本の料理には砂糖、みりんなどの甘味が入ります。だから、日本の食後はちょっと苦いお茶があってるのでしょう。
 コーヒーでもう一つ衝撃だったのは、とても濃い。それは豆をよく煎ってあることで、これにもわけがあります。料理が脂こくって、濃厚な味が多いからで、その消化を助けてくれます。それもフランスやイタリアと同様で、肉が中心で、バター、チーズ、生クリームなどが使われることが多いからです。

真っ黒な見た目が驚きの「フェジョアーダ」  その濃厚な料理の代表が「フェイジョワーダ」。水曜日と土曜日のレストランでほとんどのお客さんがを注文。その昔、ブラジルの奴隷は、主人家族が料理に使わなかった肉とか内臓をもらい、塩漬けにしてとっておき、食べる分を塩抜きして使ったとのこと。ニンニクや玉ねぎを炒めて加えて煮込んだ黒い豆といっしょに肉類をさらに煮込みます。何しろ黒くて、熱くて、初めての人は、ちょっと手が出ないかもしれません。それに山盛りの油炒めのパラパラのご飯、コーベマンテーガ〈ケール〉の細切りの炒め物、マンジョウカの粉、それはそれは辛いたれ、それに、なんとパンまでついてきます。あと、野菜サラダとオレンジジュースを注文すれば、栄養のバランスも良く、素晴らしい食事です。
 ナント、ほとんどのレストランは会計が済むと、濃くって甘いコーヒーを用意してくれるんです。もちろん、お金は取りません。

  こんなに健康的な食事からは考えられないこともあります。「肥満」!それは、何しろみなさん、本当に食べることが好き。それには場所など問いません。袋菓子をパクパクと、歩きながら、街の中のベンチに座って、地下鉄やバスの中でも、しかも、全く年齢も性別も関係ないんです。「料理の先生はやせていると作る料理がおいしそうじゃない」というお言葉に甘えて、太っている私が、普通に近く見えるほどの肥満です。


☆駅のプラットホームで・・・

ひときわ大きなベンチはカップルのため?粋なはからいをするものだとウキウキしていたら・・・肥満の人用だった!!。
ベンチの説明文にある「obesas」はポルトガル語で「肥満の」の意味。


 日系社会にはあまり肥満の方をみません。さらに元気で長生き。魚と野菜料理が多い食事が日本人の体に合っているのと同時に健康的であることを表しているのでしょう。
 和食が世界遺産に登録されたこともあって、以前から興味を持たれていた日本料理の人気は驚くものがあります。とはいえ、本当にブラジルに根付き、肥満解消までにはまだまだ、たくさんの時間がかかるでしょう。なぜか?モジの街で、秋風が心地よいこの頃でも、太陽が照ってくると、アイスクリーム屋さんには長蛇の列。そして、ほとんど、歩きながら食べています。ある日、老夫婦が手をつないで、ソフトクリームをなめながら、楽しそうに歩いていました。「これだから肥満がなくならないのよ!」ではなくて、「あんなふうに歳を重ねられたらな・・・」と思う方が膨らんでいくほど、幸せそうに見えてしまったのですから・・・

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<これまでの塩ひとつまみ>
【野口料理学園】

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