塩 ひ と つ ま み

この2月まで毎週土曜日に発行されていたフリーペーパー「かわせみ」にJICAの日系シニアボランティアとしての活動を通して感じた様々のことを、月に一度、12回書かせていただきました。「かわせみ」を発行していた「タウン企画」のご好意で、HP「家庭料理が一番!」の「塩ひとつまみ」に載せるご許可をいただきました。つたない文章ですが、良かったら、私のモジ・ダス・クルーゼスでの「食」を中心にした活動と同時に、ブラジルでの生活、日系社会とのかかわりについてお読みいただけたら、幸いです。

モジから「ボンジーア」

●12 和食の素晴らしさを子供たちに  2018年12月1日掲載

 子どもの料理教室を始めて46年、今回のボランティア活動に「和食の普及」の一つとして、日本語学校の子供たちと料理を作り、それが「食育」さらには「日本文化伝承」となればとの望みがありました。
 やっと実現したのは活動を始めてから一年半。参加してくれた子供たちは3カ所の移住地で57名。各移住地では料理講習会のほか、すき焼き祭り、運動会、敬老会、忘年会などのイベントに誘っていただきましたので、子どもたちとは顔見知りでした。
 私が住んでいたアパートから車で約40分、花作りが盛んな移住地の日本語学校に通う8歳から11歳までの男の子3人、女の子2人とは「日本料理の作り方と食べ方」の勉強会をしました。私が日本から持参した「ご飯茶碗、お椀、煮物碗、小鉢、小皿」を撮った写真を参考に、事前に 子供たちの家で和食器を用意してもらいました。親戚の家で探してもらったり、お隣りで貸してくれたり。大きさや形は違っても、12人分が一応そろいました。
 実習には中学生のお姉さんたちも加わり、小学生の実習をサポート。「ごはん(米のとぎ方を勉強)」「かきたま汁」「筑前煮」「野菜の白和え」が仕上がりました。「キュウリの一夜漬け」は書道の先生の差し入れ。 「はし」で食事をしたことがない、日本食を食べたことがない、日本食は毎日食べているけど、和食器に盛って食べてない・・・ほとんどの子供が色々と初めて。好奇心いっぱいの姿は、少しだけでも「日本の食文化」に触れてもらえたようで、ホッとしました。

箸(はし)の練習 中学生がお手伝い

みんなで食べ方の勉強 出来上がった日本食


 別の2つの日本語学校合同の、日本でいう、「夏休みの林間学校」の昼食作りの手伝い。 参加者は45名。2泊3日分の食材や調理に必要な消耗品を買うところから手伝いました。今年から2校合同の実施となり、人数が去年の倍。山のような買い物を林間学校の会場へ。
 私の出番は、2日目の昼食作り。小学校高学年以上の子供たちも手伝って「ハヤシライス作り」。直径40cm位の大鍋で一度に牛肉と野菜を煮込みました。「ルー」も子どもたちが汗をかきかき、がんばって、交代しながら焦がさず作り、煮込んで、12時にはおいしそうに仕上がりました。煮込んでいる間に、レタス、キュウリ、トマトでサラダ作り。高校生がご飯を盛って、ハヤシをかけ、サラダを添えます。

ハヤシのルー作り サラダ作り ハヤシライス完成

ご飯を盛って ハヤシをかけて サラダを盛って

飲み物は自分のカップで みんなそろって「いただきます」


 先生の方針で、皿、ナイフ、フォーク、スプーンはすべて先生の家から、飲み物のカップは各自が持参。食事が終わったら、当番を決めて順番に食器を洗って、拭く、お片付け。使い捨てではない、ものを大切にする考え方には私も賛成です。こどものころからきちんとその考え方を身につける教育はとても大事だと思います。
 2カ所で、たった一回ずつの「食育」、まだ小さな子供がほとんどでしたから、「日本文化の伝承」までには届かなくても、この経験が少しでも「和食」のすばらしさに興味を持つことにつながってくれたらと願っています。


 今回のブラジル日系社会での「和食の普及」のボランティア活動から、「日本の食文化」がその国の食を変えるほどの影響を与えていることを知りました。それは移住した人々の110年間にわたる「野菜・果樹栽培」。最初は自分たちで消費し、さらにそれをフェイラ(青空市場)で販売するようになった時、食べ方も教えて,「食生活」を変えさせていったのです。その真摯な努力があったから、日本食がブームで終わらず、日常の生活の中に浸透してるのです。
 私が活動したのは、日本の23倍もあるブラジルのほんのわずかな地域でした。そこで巡り合うことができた方々が、私の日本料理への思いを理解してくださり、活動を喜んでくださいました。2年間のボランティア活動への評価として幸せを感じています。


「モジからボンジーア」今回で終了です。お読みいただきまして、ありがとうございます。
機会がありましたら、また別のブラジルの話を書きたいと思います。

<これまでの塩ひとつまみ>
【野口料理学園】

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