今 週 の レ シ ピ

・アドバンスクラス(9月第4週)のメニューより

●月見蒸し   124kcal.  塩分1.4g

月見蒸し [材料]  -6人分-

・うずらの卵6個
・豆腐大1丁(500g)
・鶏ひき肉100g
・卵1個
  ◎味付け調味料
    砂糖大さじ2
    醤油大さじ1
    塩小さじ1
◎付け合わせミョウガの甘酢漬け

[作り方]

  1. すり鉢に水気を切った豆腐と鶏ひき肉を入れ、卵と味付け調味料を加え、よくすり混ぜる。
  2. 6枚の皿に1を盛り付け、中央にくぼみをつくり、うずらの卵を割り入れる。
  3. よく蒸気(じょうき)の上がっている蒸し器に入れ、12分くらいで蒸し上げる。
  4. 3の蒸し物に、ミョウガの甘酢漬けを添える。
ポイントはここ
  • 豆腐はふきんに包んで、上から重石(おもし)をのせ、水気を切ります。(「豆腐の野菜甘酢あんかけ」参照
  • 豆腐、鶏ひき肉、卵、味付け調味料はすり鉢でなめらかになるように、よくすり混ぜます。ボールに全部を入れて、手を泡立て器のようにしてよく混ぜてもよいでしょう。 豆腐を充分細かくし、鶏のひき肉が全体に散るように混ぜることが大切です。
  • 6等分にした豆腐の混ぜ物を皿に、6〜7a角くらいに形をととのえ、中央にスプーンでくぼみをつくります。うずらの卵の黄身をこわさないように、くぼみの中に入れます。

    すり鉢でなめらかに 中央にうずらの卵

  • 蒸気をよく上げた蒸し器に入れて、強火で12分くらい蒸します。
  • 付け合わせの「ミョウガの甘酢漬け」は、ミョウガ(6個)を縦(たて)2つに割り、熱湯でサッと茹(ゆ)で、甘酢(酢…大さじ2、砂糖…大さじ2、塩…小さじ1/3)に、熱いうちに漬けます。盛り付けるときは、花のように広げてください。
ちょっと一言
  • 蒸し器が小さい場合、また電子レンジを使う場合は、18a×14aくらいの器(電子レンジの場合はパイレックスを使う)に豆腐の混ぜ物を入れ、表面を平らにし、6ヶ所くぼみをつくり、うずらの卵を入れます。蒸し器では、15分くらい蒸します。電子レンジの場合は、ラップでおおい、4分かけて、位置をかえて3分かけます。
    荒熱(あらねつ)をとって、6等分にして各自の皿に盛ってください。

    6人分をいっしょに 6等分に切って盛る

  • 料理名に「月見」とつく場合は、卵黄または卵を落として、月に見立てたことを表しています。
    おろしたとろろ芋の真ん中に、卵黄を落として「月見とろろ」、うどん・そばに卵を落として「月見うどん」「月見そば」などがあります。
≪組み合わせメニュー≫
    ◎エビとキノコの清汁(すましじる)
    ◎里芋の煮物
    ◎ほうれん草のくるみ和(あ)え
【野口料理学園】
塩 ひ と つ ま み

■復活

「おぼえていらっしゃいますか?」
電話口のおかみさんは、なつかしそうです。心持ち声が弾んでいます。
おぼえていますとも。セイロ屋さんです。前園長のときからお付き合いがありました。もう頼まなくなって3、4年になるでしょうか。

馬の毛を使った裏ごしを注文していました。それが、「もう職人さんがいなくなってしまいました」といって先方から断ってきて以来です。そこは、セイロや裏ごしなど、いわゆる曲げ物を専門に作って売るお店です。裏ごしは、木枠は自分のところで作り、馬の毛で編んだ網を別の職人さんから取り寄せて組み立てていました。

じつは東京のそのセイロさんも、つてをたよってようやく探しあてたのです。それ以前は、この甲府市内にも木製の料理道具を売るお店があり、職人さんがいました。何十年と頑張っていましたが、一軒だけとなり、その職人さんも寄る年波に勝てず、後継者もいなかったためとうとう店じまいしたのでした。

東京のセイロ屋さんが辞めたあとは、こちらも後釜を探すことをしませんでした(今ならインターネットで簡単に検索できますが)。生徒さんからも、しいて馬の毛の裏ごしを欲しいという人がでてこなかったからです。どうしても使ってみたいという人には、貸していました。

ステンレス製など出回っていますが、馬の毛はやはりちがいます。裏ごしする食材が網目に付きにくく、なめらかに仕上がります。においもつきませんし、弾力性があってやわらかいので、あまり疲れません。それにちょっとしたことですが、使う前に水につけると、それまで弛緩していた木枠が水分を含んで膨らみ、網を引っ張ってシャンとします。そのメリハリが使う者にやる気を起こさせてくれるのです。手作りの道具に愛着を感じる一瞬です。

さて、職人を失ったセイロ屋さんでは、なんとしてもその織り(専門的にはそう言うようです)を復活しようと図りました。有志が集まって研鑚を積んだのだそうです。そして見事にそれを果たしました。

「丸々2年かかりました」
おめでたいことです。おかみさんの声が弾む理由が分かりました。しかも、おかみさん自身がグループに参加してその技を習得したというのですから、なんともすばらしい。複数の後継者が育ったということです。復元に成功したうえに、注文に対応できるよう、ある程度の数を作れる体制までととのえたということです。みなさんの熱意のほどが伝わってきました。

おかみさんは、さいごにしみじみこう付け加えました。
「一度すたれたものを取り戻すことが、どんなにたいへんかが分かりました・・・」
2年間の苦労がしのばれます。でも安心はできません。この先も存続するという保証はないのです。

こうした"絶滅危惧商品"は、少なからずあります。作るのに手間がかかる、値段が高い、使うのが難しいなどそれぞれ消滅の原因はあるでしょう。この馬の毛の裏ごしのように、使い心地が評価されているにもかかわらず消えようとしているのは残念でしかたありません。伝統の技だけでなく、それによって生み出される独特な「味」まで失われるかもしれないのです。


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