今週のレシピ |
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当学園は今週(3月26日〜3月31日)は春休みとなります。[特集] 味の基本を大切に
最近の食卓(ご自分あるいはあなたの周り)を見渡してみると、電子レンジで温めただけ、熱湯をかけて戻しただけ、さらには買ってきたままのパックを並べただけ…そんな食卓があるかと思えば、一方で、世界の珍しい食材が簡単に手に入り、さまざまな味作りを楽しむことができる。多種多様な「食」が存在する時代だけに、ここであらためて「味」とは何かを考えてみませんか? 「味作り」「家庭の味」「わが家の味」を見直してみてください。そこには、今まで以上に味わいの深い「家庭料理」が発見できると思います。=味の基本を大切に= (4回シリーズ)
1.すべてにバランスを
2.切り方に味がある (5月掲載)
3.下味付けが決め手 (7月掲載)
4.洋酒の効用 (10月掲載)
1.すべてにバランスを
「家庭料理」は、家族が心身ともに健康な生活を送るための大切な基本。すべての面で偏りがないように、いつも「バランス」を考えながら献立を工夫してください。
料理法(煮る、焼く、揚げる、蒸すなど)、材料(肉、魚、野菜、豆、いも類など)、味付け(和風、洋風、中華風など)、調味料(塩、醤油、砂糖、酢、酒類など)、そしてもちろん栄養のバランスを忘れずに。
★ 火を使わない工夫を!
献立の中に1品、火を使わない料理を入れて手順を工夫することで、他の料理に時間をかけることができます。材料の組合わせをいろいろ工夫し、火を使わない料理を10品くらいはわが家の味にしておきましょう。● 長芋の酢の物 ● 16kcal. 塩分0.5g
[材料] -4人分-
・長芋 60g ・紫玉ねぎ 20g ・かいわれ大根 少々 ◎からし酢 からし 小さじ1/2 酢 大さじ1 塩 小さじ1/3 砂糖 小さじ1/2 出汁(だし) 大さじ1 [作り方]
[長芋に組合わせる材料]
- 長芋は、皮をむいて長さ3aくらいのせん切りにする。酢水に入れて少しぬめりを取り、ザルに上げてよく水気を切る。
- 紫玉ねぎは薄切りにして水にさらす。
- 小鉢に1と2を盛り、上にかいわれ大根を少々飾る。
- からし酢を作り、3の回りからかける。
・もみ海苔と鶉(うずら)の卵
・みょうがの薄切りとシソのせん切り
・きゅうりの細目の拍子木切りと生姜(しょうが)のせん切り
★ 「汁」を献立に!
吸い物やみそ汁を食事の始まりに口にすることで、胃が刺激され、食欲が湧いてきます。したがって、おいしい「汁物」を献立に加えることはとても大事になってきます。香りやコクのある出汁(だし)を用意して、椀種も工夫し、季節の香り「吸い口」を大切にしてください。
「汁物」が決まったら、おかずを考えます。主になるおかず「主菜」と、添えるおかず「副菜」。主菜は煮る、焼く、揚げる、蒸す、炒めるなどの調理法を用いた料理。副菜は酢の物、和(あ)え物などがあります。主菜、副菜を何にするかは材料、調理法、味付けなどのバランスが取れるように考えてみましょう。● 春菊とえのきだけの汁 ● 27kcal. 塩分1.7g
[材料] -4人分-
・春菊 1/4束(50g) ・えのきだけ 1/4袋 ・煮出汁 3カップ (今週のレシピ2月第4週の「塩ひとつまみ」〈正しい出汁の取り方〉を参照) ・赤みそ 50g ・七味唐辛子 少々
[作り方]
- 春菊…硬い茎を取りのぞき、さっと茹で3〜4aの長さに切る。
えのきだけ…根をのぞき、4aくらいの長さに切る。- 鍋に出汁を入れて火にかけ、やや温まったところで、えのきだけを入れ、分量のみそをこの出汁でとき、鍋に入れる。
- さいごに春菊を入れ、ふたたび沸騰する直前に火からおろして、すぐに椀にもって供する。
★ 味付けにバラエティーを!
食事の最初は薄味、それから徐々に味を濃くしてまた薄味に戻るーー。このような「味付け」は、さまざまな調味料や香辛料を組合わせることで「おいしい」という刺激になり、消化、吸収を助け、健康につながります。バラエティーに富んだ味付けは、バランスのよい味わい深い料理に欠かせないものではないでしょうか。● 高野豆腐の炊き合わせ ● 132kcal. 塩分1.9g
・高野豆腐 2枚 ・煮出汁 1カップ ・砂糖 大さじ3 ・みりん 大さじ1 ・塩 小さじ1/2 ・醤油 小さじ1 [作り方]
- 高野豆腐はたっぷりの水につけて充分もどし、水気を切り、4等分に切る。
- 煮出汁に調味料をよく混ぜ、1を加えて落し蓋をして(鍋のふたももちろんする)煮る。(煮汁が沸騰したら弱火で10〜15分ほど煮る)
- 冷めるまで煮汁につけて、味を含ませてから盛り付ける。
ポイントはここ
- 高野豆腐は水につけるとどんどん水を吸って約2倍の大きさになります。戻す器は平らで3〜4cm深さの高野豆腐2個が膨らんでも十分と余裕のあるバットがいいでしょう。
大き目のバット 約2倍に膨らむ 1個を4等分に切る
- 高野豆腐は、煮出し汁に必ず味をつけて煮立て、調味料がとけてよく混ざってから加えて煮ます。
高野豆腐は柔らかくて軽く、崩れやすいので、「木製」の落し蓋をいます。煮汁から浮き上がり、崩れないように「木製」が良いでしょう。もちろん鍋自身のふたもしてください。
煮上がったら、落し蓋をはずして味を含ませてください。木製で軽い落し蓋でも、長い時間高野豆腐の上に置いておくと、あとがついてしまいます。
味を付けた汁で煮る 落し蓋をする 煮えたら落し蓋ははずす
ちょっと一言
- 高野豆腐は豆腐を作り、凍らせて、あと乾燥させて保存しておきます。私が20代のころ(昭和40年代後半)、長野県に高野豆腐の工場見学に行きました。工場に近づくと目をあけていられないほどの「アンモニア」臭がしました。その頃は「膨軟剤(柔らかくふっくらと戻すもの)」としてアンモニアガスが使われていました。こういう工場で働いている方々は大変だなと思いました。その折、工場を案内してくださった方から、「今、膨軟剤を研究中です。もうすぐ、アンモニアガスではない者で製造できるようになります」とのお話がありました。
私がこの仕事を始めたころは、「高野豆腐の含め煮」の授業の時は大変でした。授業が始まる前、3〜4時間前には熱湯に近い湯に高野豆腐を浮かし、冷めるまでおきます。充分水を切り、また水につけます。水を充分吸ったら水を切ります。最初は水が白く濁ってますが、それが透きとおった水になるまで繰り返します。この作業を続けて初めてふっくらとおいしい「高野豆腐の含め煮」ができました
工場見学からまもなくして、「膨軟剤」が「重曹(炭酸水素ナトリウム)」になりました。今は本当に簡単においしい煮物ができるようになったのです。
ぜひ、もう一度「包み紙」や「箱」に書かれている「使い方」「煮方」をしっかり把握して、煮てみてください。おいしいだけでなく、タンパク質も含まれていますので保存可能な栄養食品として利用することをお勧めします。
〈こんにゃくのオランダ煮〉
[材料] -8人分- (4人分では少なすぎて上手に煮えませんので)
・こんにゃく 1丁(300g) ・焼き用油 小さじ1 ・煮出汁 1/2カップ ・醤油 大さじ3(300g) ・砂糖 大さじ2 ・酒 大さじ1 [作り方]
- こんにゃくは熱湯に入れて茹でる。
- 3a角位に切り、それぞれに斜め格子に厚みの半分まで包丁を入れる。
- フライパンに焼き用油を熱し、格子目を下にして、こんにゃくを入れ、焼き色をつけ、他の面も同様に焼く。
- こんにゃくをザルに取り、熱湯をかけ、油を切る。
- 鍋に煮出汁と調味料を混ぜ、こんにゃくを格子目を下にして入れ、弱火で10分位煮たあと、それを返して反対側をあと5分位煮る。冷めるまで煮汁につけておいてから盛り付ける。
★ 日本料理にも「肉類」を!
日本料理では、魚や鶏肉が主な動物性タンパク質として使われてきましたが、最近は豚肉や牛肉の料理も作られるようになりました。栄養のバランスを考えると大変よいことですが、日本料理の味の流れ、味のバランスを崩さない料理法を工夫してください。
沖縄にはいろいろな豚肉料理があり、とても参考になります。ごま風味の蒸し物は、沖縄の「ミヌダル」を参考にしました。● 豚肉の蒸し物ごま風味 ● 268kcal. 塩分2.0g
[材料] -4人分-
・豚肉(背ロース) 200g ◎黒ごま 30g 醤油 大さじ1.5 みりん 大さじ1/2 砂糖 小さじ1/2 ◎白ごま 30g 醤油 大さじ1.5 みりん 大さじ1/2 砂糖 小さじ1/2 ◎付け合わせ トマト 適宜 ブロッコリー 適宜 [作り方]
- 豚肉は背ロースを3mmの厚さに切り、さらに1枚を4等分に切る。
- 黒ごま、白ごまを別々にいり、それぞれ別のすり鉢で熱いうちに、ねっとりするまでよくすりつぶす。調味料をそれぞれのごまに加えてごまだれを作る。
- 2に1の肉を半分ずつ漬け込み、1時間位おく。
黒ゴマに半分 白ゴマに半分
- 蒸し器にぬれ布巾を敷き、ごまだれをたっぷりつけた3の肉を1枚ずつ広げる。
- よく蒸気の上がっている蒸し器に入れ、5分位強火で、そのあと10分位は中火で蒸す。
- トマト、ブロッコリーなどと一緒に盛り付ける。
ポイントはここ
- 豚背ロースを3mm厚さに切るのは少しむずかしいと思います。生姜焼き用の少し厚めのものを買って4等分にしてもいいでしょう。
または、背ロースの塊を冷凍庫に入れ、少しだけ凍った状態にしてから切ってはいかがでしょう。- [電子レンジを使う場合]
- いりごまを使うときは、電子レンジに3分間ほどかけて温める。
- 漬け込んだ肉は、皿に広げて電子レンジに。100gにつき、2分かける。
黒ゴマ、白ゴマそれぞれの味の肉を皿に並べる
【野口料理学園】
塩ひとつまみ ■春デス…
- 男性からの電話です。
「スイマセン。教えてもらいたんですが。あのう、実は家内が急に亡くなりまして」。声の調子から、60代でしょう。「それでですね、冷蔵庫とか冷凍室に物がいっぱい詰まってまして、どうやって処分したらいいのかわからなくて…」。冷蔵庫の物というからには食品です。処分したいといいながら、ほんとうに処分しようと思えばまとめて全部捨てられるはずです。それをしていないというのは、奥さんの亡くなったのがほんの少し前であること、また無闇やたらに物を捨てたくないという気持ちの強い人であることがうかがわれます。で、冷蔵庫にのこっている食材を使いたいにも、なにをどう作ればいいのかわからない、そんなところでしょうか。- でも話をしているうちに、相談の内容が少しちがうのに気がつきました。冷凍庫のほうの中身はむろん冷凍食品。冷蔵庫内の物も、料理の心得があるのでしょう、冷凍食品同様なんとか工夫して使えるようです。それとは別に、戸棚の中にあるおびただしい量の乾物や缶詰、これをどうにかしたいということのようです。折角しまっていたものを無下に捨てていいのかというためらいもありそうです。通常の食材の買いだめのほか保存の利く材料をたくさん保管していて、奥さんはなかなかの料理上手だったようです。
- 夫人急逝後、男性は自分で料理しているようですが、別個にしまいこんであるこれら食材を駆使するほどの自信はなさそうです。そこで保存食品の扱い方を手みじかにアドバイスしました。その男性の例に即していえば、しまってあるのは乾物、缶詰の2種類です。消費する順序としてまず乾物、つぎに缶詰というのが順当でしょう。とくに乾物は賞味期限に注意し、近い物から使っていきます。干し椎茸、高野豆腐、昆布、鰹節、切干し大根、かんぴょう、寒天、スルメ、干しエビ、春雨、クズきり、焼き麩(ふ)、キクラゲなど。これらを使いこなすには、それなりの調理技術と知識が要りますので、男性がたじろぐのもわかります。
- 保存食品というと、天災・人災に対処する緊急用の非常食が真っ先にあげられます。調理の手間隙やエネルギーの消費を最小限にとどめたカップラーメン、レトルトなどのインスタント食品の類です。他方、献立の内容を豊かにする補助的存在、つまりおいしさを増進させるプラスの素材としての保存食品があります。缶詰なら非常用、プラス素材どちらにも使えます。加工した食品を完全密閉し、さらに加熱殺菌しているので、常温で長期保存が可能です。そのうえ、経済性や衛生面、栄養価の点でも非常に優れた食品で、いつでもどこでも手軽に利用できる便利さも兼ね備えています。130年前イギリスで作られた缶詰が、今でも充分に食べられるという試食結果が出ており、缶詰の保存性の高さを物語っています。
- 男性の話から、はからずも亡くなった奥さんの料理の力を垣間見た気がします。献立はせめて3日分、できれば1週間分を立てます。そうすることによって、買い物に費やす無駄な時間を料理に役立てることができます。とくに乾物類を備えておくことで、献立の内容がより一層豊かになるだけでなく、調理の流れがスムーズになります。亡くなった奥さんも、きっとそうしたことを頭に入れて乾物や缶詰を貯めておいたにちがいありません。
- この辺まで話してくると、男性の追い詰められたような切迫感が緩んで落ち着いてきました。問わずがたりに、故人のすばらしかった料理の腕前や、それを通してご主人や家族への心遣いと愛情を縷々話してくれました。まったく面識はなかったのですが、お悔やみを述べ、これからも一人暮らしの不自由さを乗りこえて頑張ってください、わからないことがあったらいつでも聞いてくださいと励まさずにはいられませんでした。
- 暖かくなってきたことでもあるし、みなさんも戸棚の奥に保存している物を一度整理してみたらいかがですか?
§【ご意見、ご感想をお寄せください。ご質問もどうぞ。】 ichiban@kateiryouri.com
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