今 週 の レ シ ピ

当学園は今週(3月24日〜3月29日)は春休みとなります。

 [特集] 備えあれば  

毎日の食事の献立を、買い物しながら考えていませんか。せめて3日分、できれば1週間分の献立を立てたなら、計画的にまとめ買いができ、買い物に費やす無駄な時間を料理に役立てることができます。乾物類、冷凍食品、缶詰は、備えておくことで献立の内容が豊かになります。

 =4回シリーズ=
 1.乾物…賞味期限に気をつけて
 2.冷凍食品…温度管理を大切に
 3.冷凍食品…ホームフリージング
 4.缶詰…中身を全部たいせつに

1.乾物…賞味期限に気をつけて

農産物や海産物を、水分をほとんど含まない状態にまで乾燥し、保存性を高めます。(水分が15%以下では、腐敗菌はほとんど発育しません)

□農産物
 干し椎茸、切干し大根、干ぴょう、きくらげ、麩(ふ)、高野豆腐(凍り豆腐)、胡麻、小豆(あずき)、大豆
□海産物
 かつお節、昆布、ひじき、海苔(のり)、スルメ、寒天

□保存方法
乾物は、湿気を吸うとカビがはえたり、虫がついたり変質しやすいものです。ピン、缶、ビニールなどに入れ、できれば乾燥剤を入れて密閉し、乾燥している所に置いてください。もし場所があったら、冷蔵庫に入れておくと安心できます。
乾物とはいえ、保存場所や保存期間によっては風味が落ちます。備えておくと便利ですが、あまり一度にたくさん買わないようにしましょう。計画を立てて、買ったら早めに使い切ることを心がけてください。とくに梅雨入り前には、買ってあるものは使い切ってしまうか、残った場合は冷凍することをお勧めします。


≪乾物を使った料理≫

日本料理は、まず「昆布」と「かつお節」で一番出汁(いちばんだし)、二番出汁をとります。一番出汁を使って清汁(すましじる)、二番出汁は煮物や味噌汁に使います。また二番出汁を取ったあとの昆布とかつお節は、「佃煮(つくだに)」にしましょう。(初年度9月第1週「鶏ささみの清汁」参照)



●高野豆腐と椎茸(しいたけ)の玉子とじ    155kcal.  塩分1.4g

高野豆腐と椎茸(しいたけ)の玉子とじ [材料]  -4人分-

・高野豆腐2個
・干し椎茸3枚
・鳴戸(または竹輪、かまぼこ)1/4本
・人参(にんじん)50g
・さやえんどう20g
・卵2個
・二番出汁(にばんだし)1.5カップ
・砂糖大さじ2.5
・みりん大さじ1
・醤油大さじ1
・塩小さじ1/3

[作り方]

  1. 高野豆腐は、ぬるま湯に浮かして充分もどし、水気を切って5_位の薄切りにする。
  2. 干し椎茸は水で充分もどし、そぎ切りにする。
  3. 鳴戸は3〜4_の厚さに切る。
  4. 人参は花形の薄切り、またはせん切りにする。
  5. さやえんどうは青茹(ゆ)でにする。
  6. 二番出汁に砂糖、みりん、醤油、塩を入れて煮汁を用意し、1〜4を加えて煮る。
  7. 高野豆腐に味が含まれたら、さやえんどうを散らし、割りほぐした卵を回し入れ、、半熟程度に煮て、煮物椀に盛り付ける。(どんぶりにご飯を盛り、その上にのせて食べてもおいしい)

☆高野豆腐

むかし、寒中に豆腐を屋外で凍らせて乾燥させたもので、高野山の宿坊で作ったところからこの名があります。現在では冷凍室で凍結し、大量に生産しています。
作り方から凍(こお)り豆腐、凍(し)み豆腐ともいいます。乾燥しているので、量はすくなくても栄養分の比率は高く、鶏肉や野菜との含め煮、うま煮
(初年度3月特集「高野豆腐の炊き合わせ」参照)、すしの具など広く使える食材です。出汁(だし)をたっぷり含みますので、やや甘めの薄味がおいしいです。
最近の高野豆腐は、とてももどすことが楽になりました。扱い方は、商品の箱や袋に詳しく書かれています。かならず読んでから、調理してください。

[もどし方の例]
高野豆腐のもどし方 50℃位の湯を広めの器に用意し、その中へ高野豆腐を浮かし、充分ふくらんだら、軽く水気をしぼります。(水でもう一度洗う必要はありません)



●白きくらげとワカメの和(あ)え物    60kcal.  塩分0.3g

白きくらげとワカメの和(あ)え物 [材料]  -4人分-

・白きくらげ5g
・ワカメもどして40g
・胡麻小さじ1
◎梅肉マヨネーズ
  マヨネーズソース大さじ2
  梅肉小さじ2
  酢、砂糖、塩適宜
  すり胡麻少々

[作り方]

  1. 白きくらげは、ぬるま湯または水に漬けて充分もどし、水気をよく切る。
  2. ワカメは水でもどしたあと、余分な水がよく切れるように熱湯をかけてから冷水にとり、一口大に切る。
  3. 小鉢に1、2を盛り、胡麻をふりかける。
  4. 梅肉マヨネーズを作る。すり鉢で胡麻をよくすりつぶし、マヨネーズと梅肉を加えて混ぜ、酢ですこしのばし、塩、砂糖で味をととのえる。(好みで醤油の香りをすこし加えてもよい)
  5. 3に4をかけるか、添える。

☆白きくらげ

むかし、中国四川省の高山だけに産した「苔(こけ)」の一種で、たいへん珍重され、スープや甘い飲み物に使われます。今では人工的に栽培されていて、手に入りやすくなりました。

もどすには、ぬるま湯が最適です。急ぐために熱湯をかける場合は、もどったらすぐに冷水にとります。そのまま熱湯に漬けておくと、大切な歯ざわりが悪くなり、味もそこなわれます。

☆胡麻

香りの高い種子です。白胡麻(金胡麻は白胡麻の一種)と黒胡麻があり、香りづけに広く使われます。脂肪含有量50%、たんぱく質20%、カルシウム、鉄分、ビタミンB1を多く含んでいます。

【野口料理学園】
塩 ひ と つ ま み

■アマゾンに凍る (つづき) 

バスは4〜5時間走って、ドライブインに止まる。それなりに設備のととのった立派な建物もあれば、小屋がけにひとしいみすぼらしいものもある。立ち寄るごとに、かならずなにかを腹に詰めておく。途中停滞したときに備えるのだ。コーヒーをすするかジュースをのみ、小腹に油で揚げたパステウ(パイに似ている)やキーベ(挽き肉を小麦粉とこねて揚げてある)、ないときはビスケットでも頬張って腹の足しにする。

水はミネラルウォーター。レストランでも頼めば水をくれるが、井戸や川の水を素焼きのツボに入れて漉(こ)したものだ。生水は禁物である。乗客の中には、川の水を直接すくって飲む者もいる。われわれが山の渓流でそうするのと似たような感覚だろう。長年飲用していれば平気なのかもしれない。

休憩の場合は20分、食事だと40分と下車時に告げられる。だが、その通りにいったことはない。20分といいながら30分、40分はザラ。時間通り出発することはまずない。アマゾンにいるんだから、時間をいってもセンナイこと、"アマゾン時間"と認知するしかない。慣れれば気にならなくなる。むしろ、正確無比より"遊び"があったほうが楽だ。万事ゆったりのここの風土に適っている。

問題は食事である。これは、悠長にかまえていたら食いっぱぐれる。バス到着とともに20人位がどどっとレストランめがけて走りこむ。店によってシステムはちがう。先にチケットを買うところ、後払いのところと。どっちにしろ時間がかかる。注文して、料理が出てくるまでがそれ以上長い。メニューの種類は少ないというのに。40分そこらはあっという間にたってしまう。待たされるほうは気が気ではない。

というのも、休憩時間はいっこうに遵守されないのに、食事時間はこのかぎりではない。40分ちょうどで出立することだってある。それができるのは、運転手たち(2人が交替で運転)に指定席が用意されているからだ。乗客が列をつくっているのを尻目に、2人は特別席に直行、着席と同時に料理が運ばれるという仕組みである。ゆっくり食べても悠々時間が余る。しかもそこで運転を替わるから、交替要員は休養充分、よし行くぞ、となる。客の都合より、自分たちの都合が優先するもののようだ。

ドライブインは乗客のためというより、運転手のためと思ったほうがいい。イン側では下にもおかないVIP待遇だ。バスは客というお金を運んできてくれるうえに、運送業も兼ねていて、定期的に物資を運んでくれる大切な交通手段である。最果ての地では、荷主より運び屋が威張っている。機嫌をそこねてはいけないのだ。

待ちに待った料理がきた。一枚の皿に油で炒めたご飯にフェイジョン豆をかけ、そのうえに目玉焼きがのっかったいたってシンプルなもの。短時間でたいらげるにはおあつらえ向きのメニューである。待って30分食べて3分、またたくまにかきこむ。なんとか時間内に済ませられた。

ふたたび緑の魔境を貫く悪路との格闘がはじまる。アマゾンの地図をはじめて見せられた時の"衝撃"は忘れない。縮尺はおぼえていないが、かなり詳しいものだった。それを見てYさんに言った。

「真っ白じゃないですか。もっと詳しいのないですかね」
「それ、かなり詳しいんだよ。それ以上の見たって、おんなじさ」

白い部分はジャングルなのだ。ほかに何もないのだから、いくら詳しいの見ても変わらない。詳しければ詳しいほど、白い部分が増すだけである。ああっ、私は自分の無知を恥じた。地図というのは縮尺が上がれば、細部にわたってびっしり書き込まれているものだという頭がある。白いからいって省略しているわけではない。ほんとうに何もないのだ。私はまず、地図でもってアマゾンを実感した。

その鬱蒼としたジャングルの只中である。どこに人がいるわけでもない。時折、トイレタイムでバスは止まる。乗客たちはそれぞれの要求にしたがってジャングルへと消えていく。深入りはできない。何が潜んでいるかわからない。Yさんに言われて、私はあらかじめ手足に入念に防虫液をすりこんだ。怖いのは蛇でもオセロットでもない。目に見えない虫の類である。これらが知らない間に、袖口やズボンの裾から侵入してくる。気がついたときには遅い。わきの下や股間に猛烈な痛みや痒(かゆ)みが走る。それが何日も続くから始末が悪い。

原生林に、わずかに道らしきものがついている。その先は草が倒れ、なにやら人が踏み入れた跡がある。なるほど、使用者が何人もいた気配である。どこでもよさそうでいて、やはり、そんな場所はだいたい決まっているようだ。すこしずつ"実績"を残し、それで安全が保証されているというわけである。

急に腹が張ってきた。グジュグジュ音もしだした。車の振動が消化に悪いことは承知している。ブラジル到着後1ヶ月で、まだブラジル食に慣れていないこともある。複雑で激しい揺れが、未消化の食べ物の詰まった袋をいいようにもてあそぶ。私自身、何が起こっているか、またこれから何が起ころうとしているか、わかりすぎるほどよくわかる。

体内にマグマが渦巻いて、いまにも噴火しそうだ。とっくに鳥肌が立っている。外はすでに暗い。天然トイレは無理だろう。つぎのドライブインまではどのくらいか。Yさんに"窮状"を訴えるわけにはいかない。腹痛でも七転八倒できないだけに、余計ツライ。動くな、耐えろ、こらえろ、がまんしろ、それ以外に対処法はなさそうだ。

あごをひき、奥歯をかみしめ、目を見開いた形相は、さぞかし凄いものだろう。車内の暗いのがサイワイしている。核心部からもっとも遠い両腕に、渾身の力を込めてリングを握る中腰の格好もかなりキワドイ。これも、悪路のおかげで似たようなスタイルの乗客が他にもいて奇異にはうつらない。

地球上稀に見る熱さの中で、内にも火の玉をかかえ、この両者にサンドイッチされた体の表面は、極地にいるごとく凍りつきこわばっている。意識を失いかけるほどだ。バスが止まる(ドライブイン到着)か、それまでモツか、一進一退のせめぎ合いが続く。あわやギブアップ寸前、バスは停止した…

暗闇に小屋がボーッとかすんで見える。失いかけた意識のせいではない。ブタンのガスボンベからとる電球の淡い光だった。その灯りに導かれ、朦朧とした私は、虫のようにゆらゆら歩いていった。(おわり)(小笠原)


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